出向を待つ凛々しい姿。
船のIT環境を整える今回の仕事は、かなり面白いです。
液晶ディスプレイの普及で、最近はどこにでもPCのモニターを置くことができるようになりました。狭い船内、今までだったら「こんなところにモニターおいたら邪魔だろう!」というようなところでも、液晶ディスプレイを壁掛けにして電子掲示板として使うことができるんです。
たとえばこんなところ。
船内のダイニングルームです。
食事を食べている時でも大切な情報は逃さない。
コックピットにだってあります。
画面には写っていないものの、コックピットの中はIT機器だらけです。
昔ながらのアナログ機器もありますが、操縦舵なんて家庭用ゲーム機のレーシングゲーム用ハンドルのようにシンプルです。あの、大しけの時に船長が力いっぱい回そうとして逆に波に弾き返されるような木の舵なんて今時流行らないみたいです。
そして船員の部屋にもパソコンが。
多くの船員は無線LANつきのノートパソコンを使いこなします。
船内を自由に移動しながらネットワークに繋がることができます。
船長室もIT完備。
昔は艦長が「航海日記」なるものを日々綴ってしていたもですが。
今や航海日記もWeb、データベース、ワープロソフト等を使って書く時代なんですね。海外から絵葉書を書送ることもなく、リアルタイムで洋上からメールが打ててしまう。
こんにちは、今日は緯度63度経度156度付近です。
海は大荒れ、この大きな揺れに慣れない船員が甲板を汚しまくってます。
明日はサメの居る海域を通るので、悪い子は海に投げ込んでしまいます。
いい子にしていますよね?
-パパ-
などと書けてしまうわけです。それはそれで味気がないのででたまには絵葉書も家で待っている妻や子供に送るのが優しいパパってもんです。
昼食後、ぼーっと空を見ていました。
台風一過、新潟の澄み切った青空に雄大な雲がぷかぷかと流れています。
東京の空とは違うのは空気が綺麗なせいでしょうか。
夕方、仕事が終わったところで、もっと空が見たいと思いマストに登りました。
コックピットより更に15メートルほど登ったマストからの眺めは、最高です。
蒼い、蒼い空がずっと広がり、東京では見られない雄大な日本海が見えました。
ぐるりと200度見渡すと、かすかに地球の丸みがわかります。そうだよなー地球って丸いんだよなー地面にいると平面に感じるのに、生きているってなんだろう?とわけもなく哲学者になります。
こんなに遠くを見渡したのはいつぶりだろう?ノートPCの前で30cm先の画面を凝視する日々。
人間らしさとはなんだろう?
ふと海岸線を見ると、ハンパなく大きな水しぶきが上がっています。
なんだろう?じっと見ていると、それは日本海の荒波が防波堤にぶつかって舞い上がっているのでした。幾度となく、押し寄せてはぶつかり、押し寄せてはぶつかり。建物の15階以上に上がる水しぶき。膨大なエネルギー。見ていて飽きません。
写真の中心の白いモコモコのようなものが、絶え間なく海岸線のいたるところで舞い上がっているのです。
もっと近くで見たくなりました。
帰りのタクシー、「日本海に寄ってください」と運ちゃんにお願いして、とっておきのスポットに連れて行ってもらいました。昔の海岸線を越え、数千のテトラポッドが新潟の街を水没から守っている防波堤で少し降ろしてもらい波鑑賞。
なんなんでしょう、この大きさは。
テトラを越えて防波堤の上を歩いていたらひとたまりもない。壁にぶつかった瞬間、波は電信柱の二倍以上の高さに舞い上がります。15メートル、強い波で20メートル以上。
500メートル離れた船のマストからでも「ゴパーン」という音が聞こえたぐらいだから、間近で見て聞くと物凄い迫力です。ドルビーサラウンドのホームシアターシステムなんて目じゃないです。映画「パーフェクトストーム」よりも迫力があります。だって本物だもの。
台風シーズンになると、必ずといっていいほど
1.女性お天気キャスターによる暴風雨レポート
(風でスカートめくれるのは意図的だ!気をつけろ!) と
2.子連れで波を見に行った父親が波にさらわれて行方不明ニュース
(その後キャスターが「安否が心配です」とわざとらしいぐらいに心配なそぶりを見せる)
という定番がテレビで流れるわけですが、今ではその気持ちがわからないでもない。
確かに、今までに見たことのないスケールとパワー、音と視覚、これは見るっきゃないんだろうなと。僕ら東京人にとっては、こんな波普段じゃ見られないから台風だとついつい近くまで見に行ってしまうんだろう、無知だから。
動画でお見せできないのが非常に残念です。ほんの数十メートル先で、高さ3メートル以上の波がコンクリートにぶつかって、はじけてるんです。タクシーの運ちゃんが「新潟の人はテトラポッドに守られてるんだよ」と言っていたが、確かにこの防波堤がなければ海抜マイナス1メートルの街はあっという間に水浸し。冬になれば、台風でなくとも日常でこんな荒波がドカドカぶつかってくると言う。現地の人にとっては日常茶飯事なのに、僕にはとても新鮮でした。
なんの話だっけ、ああそうだ、出張だ。つまりは、
1.空を見た
2.マストに登りたくなった
3.遠くの波が見えたから近くで見たくなった
ということ。
高い視点からものを見ると、今まで見えなかったものが見えてきて色々興味深い。
高いところに登るのは馬鹿と煙と言いますが、あなたもたまには無心になってマストに登ってみませんか、ということを言いたいんです、きっと。