ひさびさに久々の更新です。

朝、海に行きました。4時に波乗り仲間のOJにピックアップしてもらい、湘南へ。花水、大磯といくつかポイントを見て、最終的に辻堂に。久々の大当たり、最高にいい波。
なぜ波に乗るのか。それは僕でなくて、僕のDNAが答えを知っています。人間が人間になるよりずっと前、海に暮らしていました。海に暮らしていた生物は、波と同化してふわふわ、ぐるぐるしながら生きていて。自らが動力を持っていなかったとしても、時として、偶然にも波に乗っていたのかもしれません。
近代のイルカもまた、波乗りをします。大きな波のうねりの中に黒い影が見えたと思うと、沖の方から岸に向かって猛烈な勢いで波のパワーを受けながら、ジャンプしながら波に乗ります。何度も、何度でも、沖から岸へ、沖から岸へと。
イルカが人間を真似した、という見方もあります。僕は、初めてヒトが波乗りをした記録が残っているという西暦400年頃の人間が、イルカの真似をしたと思っています。
「波乗りってどんな気持ち?」
「like.no.other. 他の何にもたとえられない」
一言でいうと、元気が出る、かな。都会の空気、満員電車、冷房の効いたオフィス、肩こりを引き起こすノートパソコン、あらゆる毒に侵された自分の体が、自然のエネルギーと一体化したときには一気に浄化されます。

そんな波に乗った日の昼、日本帰国後初のライブ。
1ヶ月前から企画し、メンバーと一度のリハーサルと何十通のメールのやり取りを経て、ステージ構成を練り、いきなりの本番。平日の仕事が忙しいのにかまけて毎日15分から30分の個人練しかやれていなかったのを、最後の1週間でラストスパートで腕を磨く。別の呼び方をすれば付け焼刃とも言いますが。

バンドの名前はGroove Pockets。グルーヴ、文字通り訳すと「溝」だが、それは音楽のレコードの「溝」だったり、五線譜の「溝」だったり、バンドメンバーの「溝」だったりする。バンドでの演奏においては、それぞれが異なるバックグランドを持つバンドメンバーのギザギザな溝が、演奏の瞬間にぴったりと合わさることで、それは波乗りに似たグルーヴ、まるで心が浄化されるような幸せを感じることができます。
波乗りをする時に、一番気持ちのいい波の部位を、「波のポケット」と呼びます。波のポケット。そこにすっぽりと自分の板と体がおさまった瞬間に、ああ、僕はこのために生まれてきたのかもしれないと感じることがあります。大げさですって?いえいえ、本当にそうなんですよ。聞いて御覧なさい、自分の身近にいる波狂いの人に。
そんなポケットにはまった今朝、海から上がったときに、OJに言ったせりふ。
「いい波に乗れたから、このVibeをこれからライブで出すよ」
辻堂の波のおかげで、ライブ会場でそのVibeは流れ出ていました、きっと。リハーサルの時は、まだまとまっていたとは言いがたいメンバー同士が、いい笑顔でリズムを刻んでいて。聴きに来てくれたお客さんも、気持ちよさそうにこっくり舟をこぐサーファーにはじまり、目をつぶってじっくりと聴いたり、バンドメンバーのスケッチを無心に描いていたり。いま、思い出しても暖かい空間がそこにはありました、たぶん。
今日のライブは、グルーヴのポケットにはまることができたかな?
そう考えながらの帰り道。
明日の早朝サーフィンに備えて、夜は早く寝なければ。家でご飯を作る時間はない。ふと、いつも気になって中を覗きながらも、いちげんさんには入りにくいなと感じていた、こぢんまりとした佇まいのイタリアン・レストランに入ってみました。今日しか入れない気がして。今日なら入れる気がして。
それがまた、大当たり。今日の朝の波、昼の波のように。

素材、調理、メニュー、雰囲気、サービス。全てにはずれなし。14人ほどが入りいっぱいいっぱいの店内、摂氏35度を超えるであろう厨房の中で黙々と全員の料理を作るシェフの手さばきの鮮やかさを見ながら、パルマ産とサンダニエーレ産のプロシュートの盛り合わせ、藻塩を使った優しい味付けのズッキーニのフリット、カラスミとキャベツのペペロンチーノなどに舌鼓を打つこと80分。いいテンポでポンポンと出してくれます。

そこの若いシェフ~後に名前は黒川さんということが判った~は、黙々と料理を作り続けている。写真をこのようなBlogに載せたら、失礼だろうか?そのような質問を聞くタイミングは、なさげ。サービススタッフに聞いてみた、「Blogに写真載せてもかまわないですかね?」と。
シェフにひそひそと相談する、スタッフ。数秒考えた後に、「全然構わないですよっ」と、あっけらかんと応えてくれたシェフ。なんだー。料理をする彼の表情は真剣、ともすれば仏頂面ともいえたのに、実はとても気さくな方でした。こんなに入りやすい店だったら、もっと前からこの店に入るべきだったなあ。

バルサミコのソース”SOBA”がかかったパンナコッタを食べながら、考えた。なぜ、今までこの店に入らなかったんだろうか?こんなに近くに住んでいるのに。今まで何度でも入ることはできたのに。ずっと、気になっていたのに。
ええ、その答えは、波です。
波のVibeがなかったから、今までは入る勢いがなかった。海の荒波の勢いは、時として厳しい。おぼれそうになったり、飛んだ板が顔にあたったり、全身を海底に強打することも。それでも、「この波と同化したい」というか、「自然の神様、僕にも自然を感じさせてください」という気持ちを強く持った瞬間、波は同化を許してくれます。Vibeを全身に授けてくれます。
その結果、体全身のリズムが、止まっていたビートが流れ出す。
その結果、私達の心がオープンになり、ライブは楽しくなる。
その結果、あらたな扉が、開かれる。
全ては波のもとに。
波は全てのもとに。
そういうことではないでしょうか。
取材協力(?):
Madonna di San Luca / マドンナ ディ サンルカ
世田谷区中町2-9-26
TEL 03-3705-6684