2007年2月アーカイブ

前回は、「あぶく銭身につかず」 すなわち、目的のはっきりしない収入は残らないというお話をしました。

今回は、「喜び半分痛みは二倍」のお話です。どういうことかというと、人間というのは得る喜びの大きさに比べて、失う痛みの大きさは二倍以上、場合によっては三倍に感じるということ。たとえば、駐車違反で10,000円を失った痛みを忘れるには、宝くじで20,000円~30,000円当たる必要がある、と。

(*ゲインとロスの非対称性 - 心理学者 Daniel Kahneman and Amos Tversky, 1984年・1991年の研究 参考リンク - Forbes.com

この得失の非対称性をうまく利用したのが、ガソリンスタンドの値付け。彼らは、原油価格の上昇・下落は異なるタイミングで値段を上げ下げしています。値段を上げるときは一気に50円の値上げ。この結果、消費者は「うわ、50円も上がったよ」と、その一回で金銭ロスの感覚を償却ます。一方、下げるときはじわり、じわりと3円・・・6円・・・10円と徐々に下げていき、「おー、今日も下がったな。昨日も下がったな。」と、金銭ゲインの嬉しさを何度も感じさせます。

もし逆だったとすると、一度の値下げは「あ、50円値下げした!」と一回の嬉しさで終わり、数回の値上げは「うわ、今日も値段が上がったよ、昨日も上がってたのに」と繰り返されるムカツキにより消費者はソッポを向くことに。

この得失の非対称性とメンタル・アカウントを組み合わせるとどうなるか。
人間は、払った金額に対して、相応のリターンを得ないと嫌な気分になるんです。

ちなみに、この写真のサーフボード、いまだに使っていません。家に飾っているだけです。いきなり乗ってその喜びを「消化」するよりも、勉強の合間にそれを見て「早く乗りたいなぁ」と想像して楽しんで、数週間後に実際に乗ることで、たっぷりと楽しむことができるから。すでに消化した$700のロスと、毎日得られるゲイン。このバランスが、購入した物に対する満足度を左右します。

次回、非対称性とメンタル・アカウントを組み合わせた具体例を解説してみます。



先日、世界で一つだけのサーフボードを作ってもらいました。

サンディエゴのローカルシェイパーに色々と自分の希望を伝えて。制作期間は2週間、お値段は$700。マテリアルコスト、技術費用、芸術センスなどを加味するとあまりにも安い値段です。とはいえ、「サーフボード?遊びの道具でしょ?」と言われてしまうと、$700は決して安い値段ではないんです。

そこで入ってくるのが消費者心理のマネジメント。ちょうど、MBAで消費者心理におけるメンタル・アカウントの概念について学んだばかりなので、それにあてはめて説明してみます。

メンタル・アカウントとは。
私たち消費者は、無意識に収入の使途を分けています。10%は食費に、20%は貯蓄に・・・と、意識的にわけずとも、頭のなかでなんとなく「遊びに使うお金は○万まで」「食事は○千まで」と。にも関わらず、それに反する行動をとってしまうことがあります。

以下の事例は、日本語で言う「あぶく銭身につかず」。

「A夫婦がアラスカに旅行に行った際、フィッシングボートでサーモンを釣り上げ、航空便で家に送りました。その後、運送会社から紛失したと報告され、お詫びおよび弁償費用として$300の支払いを得ました。予想していなかった収入に、普段ならいかないような高級なレストランにでも行こうかと、二人で$270のディナーを食べた二人。」

普段は二人で$100のお店でしか食べない二人が、突然その倍以上のレストランで食べた。別の例を見ましょう。

「カジノに行ったBさん、年収の1%にあたる$500を二倍の$1000まで増やしたいとの考え。ブラックジャックで大勝ちした結果、$1000に。そこで満足できず、ルーレットに行き大博打をすることに。徐々に$3000、$6000、$12000まで勝ち上がったものの、結局は元手を全てなくすほどの大負け。地団太踏んで家に帰りました。」

貯金に回すこともできる収入を景気よく使ってしまった理由は、予定外収入だったから。この二つの事例だと「欧米か!」と突っ込まれそうなので、日本でよく聞く身近な例を。

「A子さんは将来オーストラリアに住む!という夢があり、支度金の1000万円を稼ぐために水商売の道に入ります。B子さんはルイビトンが欲しいからという理由で、同じ道に入ります。稼いだ金は貯金し、もらったビトンは質に入れ、半年で目標額の1000万を得てすっぱり足を洗ったA子さん。一方、稼いだ金はブランド品につぎ込み、ストレス発散にと夜な夜なホストクラブに行ってしまい、気付いたら消費者金融から500万の借金が。膨れ上がる借金を返すために5年経った今も水商売をやるB子さん。」

つまりは、目的のはっきりしない収入は残らないというお話。


次回は、ガソリンの値段と「喜び半分、痛みは二倍」なメンタル・アカウントについて書きます。




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