「そうか、ピアノを弾いているのか。いつか聴かせてくれよ」
過去数回、ライブ後の会話でベニーはいつもそう言うのでした。
聴いてもらえるチャンスと思い、ライブ後の会場で、「一曲だけピアノを弾いていい?聴いてもらえる?」とお願いしてみました。
横に居た主催者が「大丈夫かこいつにピアノ触らせて?」的な、ちょっと怪訝な顔をしたのを見て、ベニーが「大丈夫、彼はジャズピアニストだから。弾いてもいいよね?」と主催者にお願いしてくれました。これで心置きなく弾けます。
選んだ曲は、20世紀を代表する偉大なジャズピアニスト、オスカー・ピーターソンが好んで弾く"Old Folks"という曲。オスカーはベニーが敬愛するピアニストであり、彼にとってのインスピレーションたる存在。ベニーもこの曲を良く知っているだろうし、オスカーっぽく弾けばすぐに伝わると思い。
アドリブをしながらふと横を見ると、目を閉じてピアノを聴いているベニーがたまに「んーっ」「いいぜー」って合いの手を入れてくれています。暖かく見守ってくれているのをじんわりと感じながら、オスカーっぽさとベニーっぽさを交えてアドリブをする自分。映画「Sayuri」で言えば「会長」の前で踊る成長したサユリの気分ですね。
Old Folksを終えると、「いいよ、とてもいい。もっと弾いてよ。」と言ってくれました。嬉しくって、今度はアントニオ・カルロス・ジョビンのボサノバ、"Fotografia"に思い入れを込めて演奏。思い入れの一つは同じサークルからジャズを始め、その後バークリー音楽院で深く学び、ヴォーカルグループ"Syncopation"を立ち上げたTsuneがメジャーデビューしたアルバム”Of Blue”でこの曲をアレンジしていたこと。もう一つは、尊敬してやまない日本人ピアニスト、福田重男さんが好んでライブで演奏していたこと。
思い入れがあればあるほど、いい演奏ができるものです。ずっとピアノやっててよかったな、サンディエゴきてよかったな、色々な出会いのおかげでこうしてピアノが弾けるんだな、そんなことを思いながらFotografiaを弾き終えると、いつの間にかベニーの横に座っていたコンサート主催者や片付けの人達からも拍手をもらえました。
続けて、ビル・エバンスやキース・ジャレットの演奏で有名な"I Loves You Porgy"など数曲を弾いて、おしまい。ニコニコと見守ってくれていたAsakoには「ジョージさん、今日はノッてますね」と言われて嬉しかったり。
♪I Loves You Porgy http://kamesan.net/Songs/ilovesyouporgy-051230.mp3 (Piano - George / Bass - Rob Thorsen)
ピアノの音を通して、彼のおかげで自分がジャズピアニストとして成長できたこと、彼が今後も弾き続けてくれることが僕や多くの若手ピアニストにとって大きな価値であることを伝えました。
「ありがとう。これからもずっと弾き続けてくれ。仕事やバンド仲間は後からついてくるから、今まで通り、美しい音楽を心からプレイするといい」とアドバイスをくれて、更に「ピアノのことで何か聞きたいこと、手助けできることがあったらなんでもする」とオファーしてくれたベニーの人柄に、ますます惚れました。きっと彼も、オスカー・ピーターソンやレイ・ブラウン、その他の偉大なミュージシャンに優しく厳しく育ててもらい、ここまでたどり着いたんでしょう。
歴史の浅い国アメリカが産んだ、ジャズという音楽の形態。彼らが下の世代に伝えていかないと、なくなってしまう。そういう危機感と愛を持って、彼らは上から下へとジャズを伝えるんです。
そして僕も、自分が愛する音楽、自信を持って薦められる音楽を、こうして皆さんに紹介し続けることがライフワークの一部となりつつあります。今回はAsakoに生のベニーグリーンを聴いてもらい、すっかりファンになってもらいました。次回は更に多くの友達に紹介しようと決心。
CDもいいけど、やはりジャズの真価は生でしか伝わりません。機会があったら、是非生でジャズの演奏、ベニーのピアノをお聴きくださいな。
Benny Green - Homepage
お勧めの一枚 - Jazz at the Bistro at Amazon.co.jp

ここ数年、ベニーと積極的に演奏を続けるソウルフルなギタリスト、ラッセル・マローンとのデュオライブ録音。二人だけで演奏しているのに、その勢いと迫力はまるでフルバンドのようにひたすら熱い。カーペンターズ及びテレビ番組「セサミ・ストリート」でフィーチャーされた名曲、"Sing"の演奏での観客の盛り上がりに注目。
♪Sing from "Jazz at the Bistro" - http://kamesan.net/Songs/Sing.mp3 (Piano - Benny Green / Bass - Russel Malone)






