ジャズとハンバーガーとLinuxの意外な関係について。
素材が同じでも料理人が違えば味も変わる、これは食べ物でも音楽でも同じ。レストランビジネスは音楽ビジネスに通じるものもあり、さらにはLinuxが代表する「オープンソース」の概念にも通じます。

ジャズ・ピアニストのビル・エバンスの言葉「僕は100曲を1回練習するよりも、1曲を100回練習するべきだと思う」について考えます。ジャズをやっていると、ちょっとだけ弾いて「この曲はいい」「この曲はよくない」と判断して、暫く弾かなくなる。3年後、もう一度弾いてみると、「実はいい曲じゃん!」と感じることがあるけど、それは曲が変わったわけではなく、自分なりの曲の料理の仕方が変わったから。今までより効果的に、ダイナミックに、リリカルに弾けるようになると自分の曲に対する評価も変わってきます。
先日、五反田の本格アメリカンハンバーガー「フランクリンアベニュー」のオーナー、松本幸三さんから聞けた話には、ベテランのジャズミュージシャンに通じる力強いスピリットが感じられました。過去15年に渡って営業してきたフランクリン、その間メニューの価格は据え置き、メニューの内容もほぼ同じという。その制限の中で、メニューに使う素材は日々見直し、よりいいものを使うように改善しているとのこと。

彼が提供するメニューの中には、「これはほぼ完成」というものから「まだまだ改善の余地あり」というものも。たとえばアボガドバーガーは50点台。現在市場で出回っているアボガドは、実がまだ青くて熟さない内に収穫して、流通の過程で熟したものを売っている。たとえば一番旬で熟したアボガドをカリフォルニアから空輸して提供できれば、もっと美味しいものができるらしい。
彼の中で最も自己評価が高いのは「マッシュルームバーガー」の90点。これは僕にとってもナンバー1のお気に入りメニューで、スイスチーズ乗せが凄くお勧めです。「使っているマッシュルームだけで原価が800円を超えますよ」という、利益を下げる脅威の原価率。当然、来るお客様が全員こればかり頼んだら店は潰れるけど、他のメニューや飲み物などの売上とバランスを取ることで全体として利益を保っているそうです。
「飲食店は個別のメニューの利益率を考えたらダメ」
福島産のマッシュルームの美味しさを体感してもらうためにと、生のマッシュルームを軽く洗って出してくれました。真っ白く、芳醇で、臭みはなく、さくっと瑞々しい。これは確かに美味しい。スーパーで買うと4~5個入りで3~400円というこのマッシュルームを10個以上使っているマッシュルームバーガー、彼の自信の一品には納得です。

色々と工夫をしているうちに、食材の取引先は50社へと膨れ上がり、日々の管理は大変になってしまったそうな。手間を減らし利益率を上げるためには少しでも安い食材をまとめて提供してくれる業者を絞るべきなのに、最高の味わい優先するために幸三さんは逆行してしまったわけです。
今でも月曜日、水曜日以外は8時から厨房に立ち、同じような本格的なハンバーガー屋を開きたいチャレンジャーのために修行の場も提供しています。たまには容赦ない「教育的指導」が入るという修行、通常の期間は10年。長く感じるこの時間に対し、チャレンジャーは「5年間でお願いします」とお願いしたとか。
「5年間でハンバーガーは作れるようになるが、店を潰さずに経営するためのノウハウは学べない。うちで修行するということは、借金して出した店を潰して人生を棒に振ることがないところまで教えるということだから」と言いつつ、とりあえず5年で何とか育て上げようとしています。フランクリンアベニューがオープンした当初三年間は閑古鳥を鳴かせつつも、今や東京でナンバー1との名高いハンバーガー人気店へと育て上げ、同じコンセプトの本格バーガーの老舗、ホームワークスのオリジナル・レシピも作った彼ならではの説得力のある言葉。本郷にある本格バーガーのファイヤーハウスとも深い繋がりがあるそうです。
「僕の店には秘密がない。聞かれたことはレシピでもなんでも答えます。それを聞いた人が自分より美味しいものを作るようになったら、むしろ対抗心が沸いてやる気が益々出るでしょ。」
この考え方は、ソウルや技法を弟子に伝えるジャズミュージシャンにも通じるし、Linuxなどのオープンソース開発にも通じます。自分の作品やコンセプトをオープンにすることで、それを応用した人達がよりいいものを作ろうとする。すると、自分も「こりゃもっと頑張らなきゃ」と、よりいい仕事をするようになる。マイクロソフトのように業界シェアを独占しているとどんどん製品の質が下がるソフトウェア界の現状とは対照的な幸三さんの言葉。
この日は、7月に幸三さんがドラムを叩くジャズバンドの参加メンバー顔合わせで行ったのですが、本当に「美味しい話」が沢山聞けました。
夕方までBBQをしていたにもかかわらず、ぺろりと食べられてしまったマッシュルームバーガー(左上)。今回の企画に誘ってくださった音楽ライター兼企画担当者の吉岡さん(右上)。隣のフレンチ「ヌキテパ」から、田辺シェフのオリジナル「スイカのショートケーキ」(左)は生のスイカをそのまま使っていたのにびっくり。デザートと迷って結局一緒に頼んでしまったチョコレートミルクシェーク(右)は絶妙なふんわり加減。

予約は昼12時までしか受け付けないため、タイミングが悪いと激混みになるこのお店。それでも待つ価値はあります。この時期は外のテラス(右下)が最高に気持ちいい。
ジャズ好き、バーガー好き、ITオタク、誰もが納得するハンバーガー・レストラン。あなたも是非。
名称: 7025 Franklin Avenue
住所: 東京都品川区東五反田3-15-18
電話: 03-3441-5028
営業: 11:00~21:00 (日曜 ~19:30 )
定休: なし
Livedoorグルメ: 「フランクリンアベニュー」
音楽ライター吉岡さん: Soul Searchin' Diary 5月6日分に詳しい解説あり
Appleさん: まいにちをおいしくたのしくBlog「7025 Franklin Avenue フランクスバーガー(五反田)」